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Bohemian DeDe
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ロマのばあさん 9
 翌日スネジャーナと共に県道みたいな大きな通りに陣取って、
タロットカード占いをやる。





彼女にはもう、顧客が着いているとみえて、不思議な道具をそろえている
間にもお客様が一人、また一人とポツポツやってくる。

カードを使いながら、不思議な古ぼけた本のページをめくっては
なにやら呟いている。

いきなりお客さんの手を握り、目を見つめながらひと言!

何を見てもらっているのか知らないが、

ある人は突然笑い出し、

ある人は頭を抱え、

ある人は体全部を使って怒りを表している。

ロマは昔から占いをして生計を立ててきたと言われている。

だが、その内容たるや様々で、かってイギリスに住んでいたときには
あるロマが近寄ってきて、

「あなたはもうすぐ結婚する。 子供は8人できるだろう。
 幸せな一生になることを保障する」

なんて一方的に言ってきて5ポンド要求してきたおねえさんがいたが、
あれから20年たつがDeDeは悪いが今でも独身である!

だが、スネジャーナはそんなインチキ占い師ではない。

DeDeはその頃、大きな悩みを抱えて生きていた。

どうしようもない引っ込み思案、社会不適合人間、
この世のどこに足を置いて生きていったらいいのか、
いや、第一足を置ける所などあるだろうか・・・・・

そんな自分をもてあましながら、将来に対する不安で
押しつぶされそうであったのだ。

スネジャーナはDeDeのことを「私の娘のつかの間のHoliday」
と言いながら、優しい目をして、カードを引くようにDeDeを促した。

スネジャーナは白髪に緑の目をして、腕はしわくちゃで
鳥の足のようにやせ細っている。

だが、その声は歳をめされたニンフのように温かく、人の心を溶かす
魔法の力を持っていた。

カードは・・・・・   Fool




 
そうだ。  

今のDeDeを形成するその原点をスネジャーナは指していた。

DeDeはどこにもいつかない。  一生どこにも。

持つものもなく、共に肩を抱く人もいない。

だが、心にはいつも計り知れない好奇心と夢が宿っている  と。

その時はどう、解釈していいのか分からなくて、
その夜はスネジャーナの隣に簡易ベッドをくっつけて手をつなぎながら寝た。

ベッドの中で歌ってくれた彼女の低いしわがれ声の子守唄(?)を聴きながら
DeDeは流れる涙をどうしようも出来なかった。



  オーストリアの皇太子が撃たれて第一次世界大戦の引き金を
 引いた現場。  英雄として記念碑が建てられている。


翌日、街の観光に行って来る、と一人出かけたDeDeが
夜遅く戻ってくると、そこは、もぬけの殻であった。

あの熊公も、テントも、おんぼろトラックもない。

ただ、毎晩ワインを酌み交わしながらグーラッシュスープの
美味しさに舌鼓を打ったカマドの跡がにぶくくすぶっていただけだった。

スネジャーナは消えた。

DeDeに人生の北極星を示してみせたあとで。


                       Bohemian  DeDe

Bohemian DeDe
| 世界心の旅 ユーゴスラヴィア編 | 18:14 | trackbacks(0) | pookmark |
ロマのばあさん 8



 我らが楽隊の出番は1時間に1回。

演奏時間は15分くらい。

出番を待つ間はビールやワインを飲ましてくれる。

なんといいオーナーなんだろう!!!!

kissの一つでもしてやろうと思ったが、恐れをなしてか出てこない。

DeDeはここでも人気者で、一緒に飲もうとか、写真を撮らせてくれ!と
あちこちからお声がかかる。

ピピンもあがりが上々と見て機嫌がすこぶるよろしい。

すっかり暗くなった頃、我々はそのワインバーから引き上げることになった。

帰るときにピピンたちはラベルのないワインのビンにしこたまワインを
注いでもらっている。
昨夜飲ませてもらったのもこれだな!と思い出す。

ロマというのはこうやって稼いでいるのだろうか?

お店のオーナーからもいくらかはもらうようだが、その金額は
かなり微々たるモノの様である。

お客様からのチップと、お店の現物支給、ワインとパン。

これで彼らの生活は支えられているのだ。

税金なんて払ってないだろうし、社会保障とは無縁だろう。
これが社会主義国家ユーゴスラヴィアでのひとつの事実だ。

よく考えると、戸籍もないだろうし、だからパスポートなんて
持っていないと思うのだが、どうやって国境を越えて流離い歩いて
いるのだろうか????

不思議なことばかりだが、今はあへてそんな話は忘れよう。

ロマとの不思議な暮らし をしばし愉しもうではないか。


                   Bohemian  DeDe
Bohemian DeDe
| 世界心の旅 ユーゴスラヴィア編 | 21:56 | trackbacks(0) | pookmark |
ロマのばあさん 7




 熊公の街頭演芸を5回ほどやると、もう帰ると言う。

え、もう働かないのか?  と思ったら、今度は音楽を奏でに
ワイン酒場へ行くらしい。

これぞロマの真骨頂!

演奏しないで何をするかだ!

どうも、この街ではDeDeは人気者で集金もいつもより良いらしく、
すっかり腕を見込まれてしまった。

で、 ワイン酒場でも会計係りに任命される栄誉を得た。

熊公を根城に一旦降ろしに帰り、
演奏道具をかつぐとまたオンボロトラックに乗って出かける。

街から少しだけ離れた雰囲気のいい酒場に着いた。

一体この国の人は何時から飲み始めるのだろうか?
社会主義体制なんだからしっかり5時までは働かないといけないのでは
ないだろうか????

だが、まだ4r時半ごろだというのに、オヤジたちは酒場でもう上機嫌だ。
その日はかなり暑くなり、三々五々と人も増えてきてみんな美味しそうに
ビールを飲んでいる。

さあ、我々の登場だ。

ピピンはアコーディオンを、奥さんの親戚のディオと呼ばれている男と
その他男いろいろ(どういう関係なんだかよくわからない?)
はバイオリンを軽やかに引き出して登場する。

ちなみにDeDeは集金係りなので、帽子をかぶったまま脇に控えていた。

なんと表現したらいいのか、ピピンたちは圧倒的な楽しさで登場したのだ!!!

ロマの音楽はレコードなどで多少は聴いたことがある。
だが、彼らの生の音楽はレコードのそれに圧倒的な3次元の
付加価値をつけてDeDeの目の前に覆いかぶさってきた。

この圧倒的な楽しさ!

このずば抜けた心地よさ!

このどうしようもない腹から湧きあがるエネルギー!

気がつくとDeDeは前に飛び出して彼らの音楽と一緒に踊っていた。

お店の人がDeDeに引っ込むようにジェスチャーをすると、
お客さんが「ナニ言ってんだ〜お前が引っ込め〜」
という感じでお店の人をやじっている。

かなり出来上がっているオヤジ達は一緒になって体をゆすり
この場のこの瞬間のエネルギーを十分に受け取っている。
ビールの追加注文が沢山なされると、DeDeにもその分け前は回ってきた。

DeDeは無類のビール好きである!

グラスを触れ合いさせ乾杯をしながらみんなで踊りだした。

ああ、本当になんと表現すればあの素晴らしい心の興奮を
伝えることが可能だろうか?

世界で一番愉しい所はどこ?

とあの時聞かれたら、DeDeは迷うことなく

「いまここ!」

と答えたであろう。

ピピン達の奏でる音楽は愉しく、エキゾチックであり
たまらなく透明で、DeDeの体を通してそれは大きく
天まで昇る”喜びのかたまり”に昇華していった。


                   Bohemian  DeDe



Bohemian DeDe
| 世界心の旅 ユーゴスラヴィア編 | 21:04 | trackbacks(0) | pookmark |
ロマのばあさん 6
 

その日、スネジャーナの甥っ子ピピンについて街に行くことになった。

なんか、本当に信じられないことなのだが、DeDeはすっかりこの
ロマの一族のお仲間に入れてもらえたらしい。
それが証拠に会計係りを任命されたからである。

オンボロトラックの荷台に熊と一緒に乗る。
この熊公、さるぐつわ、ならぬ熊ぐつわをはめられてはいるが、
なんたって熊である。

いつ襲い掛かってきても不思議はないのであるが、
ピピンとその仲間には異様になついていて、おとなしくグルグル言ってる。

だが、時々DeDeと目が合うと、”なんだこいつわ?”という
顔をして鼻で”フン”とやるのでもう、恐ろしくて仕方がない。

だが、ほんの少し走っただけでスコピエの街に着いた。

さあ、さあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!
熊公ちゃんの大道芸だよ!!!!

と多分ピピンは言っているのだと思う。

黒山の人だかりになる。

チトーさんのユーゴって、いきなりこんな熊ちゃんが車から降りてきて、
街で大道芸をやってみせたりして、道は人ごみでくグチャグチャになって
何にも取り締まったりしないのだから不思議である。

この熊公、あまり優れものではない。

芸といったって、台にのっかたり降りたり、首を振ったり、
帽子をかぶってみたり別にたいしたことをしているわけではない。

でも、周りの人は指差して笑っている。

おそらく、この熊公ではなく、ピピンの合いの手の語りが
面白いのかもしれない。

しかし、ロマってこんなこともするんだ〜

ぼやぼやしている間に、ピピンに帽子を渡され、
早く会計係の任務を果たせとつつかれる。

そうさ!  

DeDeは観劇代を集めて回る係り=会計係りを拝命したのである。

ロマの一座に得体の知れない女の子が紛れ込んで、
おひねりを要求している!

みんな面白がってドンドンお金を入れてくれる。
ついでにDeDeと写真を撮りたがる人もいて、
なんだか急に田舎のスターになった気分であった。


                                                    Bohemian DeDe
Bohemian DeDe
| 世界心の旅 ユーゴスラヴィア編 | 15:08 | trackbacks(0) | pookmark |
ロマのばあさん 5
 



その夜はテントに泊まらしてもらった。

いずこの国でも酒を共に酌み交わすと、もう仲間になれる。

”ロマのDeDe”の一丁あがりである。

朝起きると”仲間”は沐浴をしていた。

なるほど天然のお風呂がテントの目の前にあるわけだ。

彼らも移動暮らしは夏の間だけで、冬は「定住」しているらしい。

通訳のニーニャも学校にいっているかは怪しいもので、
どうやら時々登校みたいな暮らしのようである。
ちょうど昔の日本にもあった芝居小屋の一族みたいなもので
あろうか。

DeDeにも「フロ」に入れと無邪気に誘うが、寒くてとてもそんな気には
なれない。

辺りを見渡すとなんと熊がいるではないか!

このロマの一族が飼っているのだろうか?

熊をペットにするなんてユーゴスラヴィアでは許されるのだろうか???


                           Bohemian DeDe
Bohemian DeDe
| 世界心の旅 ユーゴスラヴィア編 | 22:51 | trackbacks(0) | pookmark |
ロマのばあさん 4



 ロマの社会は閉鎖的だと思い込んでいた。

異邦人を受け入れるはずがないと。

だが、いきなり現れたどうみても毛色の違うDeDeを見ても
みんな驚いた顔は一応しているが、ニコニコして[受け入れますよ!]の
サインを出してくれている。

そこで丁度夕餉の支度が出来上がった。

全部で13人位いるであろうか、皆が火の回りに集まってくる。

スネジャーナばあさんとその一族らしい。

ラベルの何も貼られていないワインボトルから赤い色のワインを注がれる。

みんなで乾杯する。

何をどうやってこの場をもたせればいいのか、言葉のない苦痛を
もてあましていたら、年のころ13歳くらいのニーニャと呼ばれていた
女の子がカタコトのドイツ語と英語まじりで”通訳”を買って出てくれた。

彼らはやはりこの辺りを移動して生きるロマで、
スネジャーナばあさんの甥一家とその親戚チョロチョロらしい。

もともとルーマニアの生まれらしいが、ロマは基本的に祖国という
感情が希薄で、国と国の間もスルリと抜けて生きてきたから
「我らの土地」という言い方で、どこを指すのかよく分からない。

ただ、スネジャーナばあさんの夫も娘夫婦もみんなナチと戦争で
殺されたらしく、DeDeはなんと、その娘さんの一人にとてもよく似ている
らしいのだ。

ほら、ともう、ボロボロになった写真を見せられたが、DeDeには
どこが似ているのかよく分からない。

だが、ばあさんは「神が娘に遣わしたつかの間のholidayだ」と言って、
天を仰いではDeDeにキスをして手を握り嬉しそうだ。

よくよく見ると、目が似てない事もない。

スネジャーナは天と交信の出来るアストロロジャーでも
あるらしいから、 本当にDeDeは生まれ変わりなのかも・・・・

ワインをたっぷり飲んだら、ごく自然と男達はアコーディオンを
引きはじめ、かなりオンボロのバイオリンを合いの手に、
愉しい踊りと歌が始まった。

                      Bohemian DeDe


Bohemian DeDe
| 世界心の旅 ユーゴスラヴィア編 | 16:00 | trackbacks(0) | pookmark |
ロマのばあさん 3
 

ロマの婆さんの名はスネジャーナという。

手を握ったまま放さない.

しばらくすると、仲間らしい男の人が何人か現れる。

DeDeはここですっかりパニックになる。

もしかしたら、ここで捕らわれてどこかに売られたりして〜

どうしよう〜


だが、捕らえにきた男達の目は澄んでいて、とても悪そうな人には
見えない。

ばあさんと何か話しているのだが、もちろんDeDeにはさっぱり分からない。

そのうちの一人の男が、DeDeがパニクッっているのに気がつく。

ニコニコして 「OK!  OK!」 とか言うのだが、何がOKだかいっこうに
分からないではないか!

どうも自分達の所に来い、と言っているようだ。

一体それはどこなんだろう?  

恐ろしいのが半分と、 興味津々なのが半分。

で、着いて行くことにした。

トラックの荷台に乗る。

ばあさんは自分の持ち物はそのままそこに置いて
男達と一緒に荷台に乗って嬉しそうにDeDeの手をやはり握っている。

ほんの少しだけ走ると、彼らの根城なのであろうか?
テントが張ってあったり、廃屋のような小屋があったりする周りに
火をたいて夕餉の支度をしている女や酒を飲んでいる男がいた。

この人たちロマの一族か????

                       Bohemian DeDe
Bohemian DeDe
| 世界心の旅 ユーゴスラヴィア編 | 17:25 | trackbacks(0) | pookmark |
ロマのばあさん 2
 見知らぬ土地に足を踏み入れたら、
とにかく歩き回ることにしてる。



その日も街中をぐるぐる回り、気の向くままに地図もなく
もう、どの位歩いてきただろう?

9月の上旬だというのに陽がかげりだすと一気に寒くなってきた。

街への帰り方も分からなくなって途方にくれていると
明かりが見えた。

その方向へ吸い寄せられるように行ってみると
一人の老婆が焚き火をしている姿が見えた。

その風体からロマ(ジプシー)だと察しがついた。

ユーゴスラヴィアにはどのくらいの数だかは分からないが、
かなりのロマがいることは知っていた。

だが、もちろん個人的にお友達になったことはないから
彼らのことは全然知らない。

街で占いをやったり、結婚式なんかに呼ばれて踊りや歌を披露したり
それ以外はスリや引ったくりを生業にする、なんてこともよく聞いていた。

実際パリでスリにあったりしている。

というわけで、DeDeもたぶんにもれずかなりの偏見をもっていた。


すると、老婆と目があった。

慌てるDeDe。

だが、老婆は身じろぎもせずDeDeを手招いて自分の隣に座らせ、
コーヒーをご馳走してくれた。

何か話しかけられるも、何の言語だかさっぱりわからない。
身振りも入れて、なにかとても大切なことを語っているような
雰囲気である。
おまけに彼女はDeDeの手を握ったまま放さないのだ。


                       Bohemian DeDe
Bohemian DeDe
| 世界心の旅 ユーゴスラヴィア編 | 22:13 | trackbacks(0) | pookmark |
ロマのばあさん 1
ユーゴスラヴィアという国はもうない。

バルカン半島は歴史的にずっと火薬庫であったが、
1980年にチトーが亡くなると予期していた事態が起こった。
その悲惨な出来事はまだ多くの人の記憶に新しいことだろう。




DeDeはまだチトーが生きていた頃のユーゴスラヴィアで
スネジャーナという名のロマ(ジプシー)のばあさんとほんのひと時
共に暮らしたことがある。

今思い出しても、あれは夢だったのだろうかと・・・
定かではない。


ロマのばあさんの切なく、しわがれた歌声は 
今もDeDeの耳の奥に圧倒的なインパクトで迫ってくる。


                         Bohemian DeDe
Bohemian DeDe
| 世界心の旅 ユーゴスラヴィア編 | 17:01 | trackbacks(0) | pookmark |
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